乗鞍のタイム分布とパワーウェイトレシオ表

またはパワーウェイトレシオ格差社会。
全日本マウンテンサイクリングin乗鞍のゴールタイムとパワーウェイトレシオの分布から、「ホビーレーサー」ってどんな人たちなのかを想像してみるテスツ。
まずは2009年大会のチャンピオン、ロード年代別男女のゴールタイムの分布。横軸がタイムで縦軸が度数(人数)ですが、横軸についてはlog(x[sec])で対数変換してるのでスケールに注意。
最頻値は8.58316757(89分)で、標準偏差は0.23828524。グラフの横軸では最頻値89分を中心に標準偏差±1〜3でタイムと、タイムから推定したパワーウェイトレシオをマーキングしてます。パワーウェイトレシオについては
  • 体重: 61[kg]
  • バイク: 7.5[kg]
  • 装備: 2[kg]
  • 総重量: 70.5[kg]
  • 転がり抵抗係数: 0.0045
  • 空気抵抗係数: 0.3299 (てきとう)
という「標準的ホビーレーサー(笑)」を想定し、現地で採取した乗鞍の詳細な勾配データ上で、走行抵抗・加速度・大気密度etc...を加味した物理シミュレーションで求めています。平たく言えば脳内サイクリングのエンジンです。
全3634サンプルのうち、標準偏差の区間ごとに
  • 標準偏差-3の区間である43〜55分の間に0 (0%)
  • 標準偏差-2の区間である55〜70分の間に206人 (5.6%)
  • 標準偏差-1の区間である70〜89分の間に1236人 (34.0%)
  • 標準偏差+1の区間である89〜113分の間に1407人 (38.7%)
  • 標準偏差+2の区間である113〜143分の間に580人 (15.9%)
  • 標準偏差+3の区間である143〜182分の間に173人 (4.7%)
  • 標準偏差+3以上の区間である182分以上に32人 (0.8%)
という分布になります。とりあえずこれをざっと眺めると、乗鞍に参加する73%の人は1時間10分〜1時間53分でゴールしています。そして上位5.6%が55分〜1時間10分の間にゴールしてる感じです。73%の「標準的ホビーレーサー(笑)」のパワーウェイトレシオは2.27〜3.88[W/kg]とずいぶん開きがあります。フーン。
(注: シミュレーションではドラフティングや風向きなどを考慮していません)
ここでもう一歩踏み込んで...
乗鞍のコースは標高が1500〜2700m周辺と高地にあるため、有酸素運動のパフォーマンスは海抜0mのそれより低くなるはずです。FAQ for training with powerに載ってるBassettの式を元に、だいたいまん中らへんの海抜2200mにおけるVO2maxの低下率86.02%をそのままパフォーマンスの低下率としてパワーを補正し、海抜0mでのパワーウェイトレシオを推定した図がこちら。
補正すると「標準的ホビーレーサー(笑)」のパワーウェイトレシオは2.64〜4.51[W/kg]ってことになります。なんとなくもっともらしい感じがしてきました。でもやっぱり開き大きいよね....
(注: 86.02%だと低下率を大きく見積もり過ぎで、推定パワーウェイトレシオを過大に推定してる可能性があります。)
というわけでもうちょっと使い出が出るように、元々のタイムの分布に1W/kgきざみで生のパワーウェイトレシオと、海抜0mにおける推定パワーウェイトレシオを重ねるとそれぞれこんな感じ。
55分付近の平地で推定6[W/kg]とかもう、おっかなくてちびりそうですね。
(注: シミュレーションではドラフティングや風向きなどを考慮していません。また86.02%だと低下率を大きく見積もり過ぎで、推定パワーウェイトレシオを過大に推定してる可能性があります。)

Coggan先生のPower Profiling spreadsheetにはパワーウェイトレシオごとにカテゴリーがおおざっぱに示されてます。一番上の"international pro"や、一番下の"Untrained (non-racer)"とかは判りやすいんですが、その間の"Good (cat.3)"とか北米を前提にされた分類されてもよくわかんないっすよね。ですが上記の図とPower profiling sheetを組み合わせるとなかなか面白い気がする。
さて。これらの分布からヒルクライムに参加する日本のホビーレーサー像がちょっとだけ見えた気がします。気がするだけかも知れませんが。それでもレースの運営、自転車・用品店での展示・販売方法、情報誌の対象読者像の設定などなど、いろいろな使いどころがありそうな気がします。より詳細なデータや他のコースでの分析は有料コンテンツとなりますので sales@module.jp までご連絡ください。
ちなみに、キレイに正規分布してる場合は
  • 標準偏差-3の区間に2%
  • 標準偏差-2の区間に14%
  • 標準偏差-1の区間に34%
  • 標準偏差+1の区間に34%
  • 標準偏差+2の区間に14%
  • 標準偏差+3の区間に2%
ってかんじの分布になるそうですが、まぁだいたい近い分布なんじゃないかなと思います。たぶん。
ちなみに筆者は「標準的なホビーレーサー(笑)」ど真ん中です。
偏差値あがるようがんばってます。