空気抵抗とパワーとタイムの計算式

CdAやパワーは計れるようになったけどそれをどう使うか?また、「10ワット軽減」とかうたってる機材はタイムに換算するとどんな効果が現れるのか?その計算方法。
  • w: パワー[watt] 
  • CdA: 空気抵抗係数[m^2]
  • p: 大気密度[kg/m^3]
  • v: 速度[m/s]
  • Crr: 転がり抵抗係数
  • m: 質量[kg]
  • g: 重力加速度[m/s^2] 

1. CdAと速度からパワーを求める式
w = 0.5・CdA・p・v^3 + Crr・m・g・v 
2. 速度とパワーからCdAを求める式(1を変形)
CdA = (w - Crr・m・g・v) / (0.5・p・v^3)
3. CdAとパワーから終端速度を求める式(1を三次方程式の解の公式でゴニョる)
a = 0.5・p・CdA 
c = m・g・Crr 
d = w・-1 
v = 1 / (6・a)・((4・(-27・a^2・d + 3・a・√(3・(27・a^2・d^2 + 4・a・c^3))))^(1/3)  + |(4・(-27・a^2・d - 3・a・√(3・(27・a^2・d^2 + 4・a・c^3))))|^(1/3) ・-1)

それぞれこの3つの式で計算できる。いずれも平坦路を想定。


例えば、大気密度1.226kg/m^3、Crr=0.004、m=65kg、g=9.81m/s^2の状況において、CdA=0.215で速度11.11m/s(40km/h)で走る必要なパワーは1の式で
w = 0.5・0.215・1.226・11.11^3 + 0.004・65・9.81・11.11
w = 209.07

同様に速度11.11m/s(40km/h)で209.07Wで走行時のCdAは2の式で
CdA = (209.07 - 0.004・65・9.81・11.11)/(0.5・1.226・11.11^3)
CdA = 0.2149

CdA=0.215で209.07Wで走った終端速度は3の式で
(省略)
v = 11.1099

という感じに求められる。


同様の速度で"10ワットセーブする"というフレームに乗り換えた場合、CdAは
CdA= (209.07 - 10 - 0.004・65・9.81・11.11)/(0.5・1.226・11.11^3)
CdA = 0.2031

このCdAで209.07Wで走った場合、速度は
v = 11.3120

となり、10kmあたりのタイムは
dt = 10000 / 11.3120 - 10000 / 11.11
dt = -16.07

同じパワーで10kmあたり16.07秒速く走ることがわかる。


逆に、フレームそのままで同じだけタイムを短縮しようとする場合、必要とされる追加のパワーは
dw = (0.5・0.215・1.226・11.3120^3 + 0.004・65・9.81・11.3120) - 209.07
dw = 10.55

と、16.07秒早く走るためには+10.55W大きなパワーを要求される。"削減されるパワー10W"と比べて"必要なパワー10.55W"と微妙に大きくなるのは、パワーは速度の三乗で増加するから。削減できるパワーと必要なパワーは対象な一対一の関係にはならない。


Zippとかはカタログで「何Wセーブして何秒速くなる」って表記してますが、だいたいこんな感じの計算のしかたになります。もし勾配が変化するような特定コースのタイムとかを計算したければ、筆者の脳内サイクリングみたく加速度を逐次計算するのが簡単。