Cannondale Slice RS 2013春仕様

3月に組んでもらって2ヶ月練習で毎日使って1回TTレース走った時点での感想。"ライディングインプレッション"ではなくビルドレポート的な内容。


Cannondaleの新作TTバイクSlice RSがデビューした2011年、当時の第一印象は「すごく合理的に見えるけど滑稽」だった。でも人間慣れるもので2012年の冬頃にはなんかカッコよく見えてくるんだからおもしろい。2012年12月中旬にワイズロード渋谷本館にフレームセットを発注し、当初の納期2013年1月上旬からのびのびの蕎麦屋の出前状態になりながらも2013年3月2日に受領。同日なるしまフレンド神宮店に部品もろとも運搬して小畑さんに組んでもらった。
Photo by @7ga4
Cannondale Slice RSに一番に求めたことは、身長163cmな私が個人タイムトライアルで走るためのきちんとエアロなフォームを多関節ステム(Look Ergo stemの類い)を使わずにとれること。BBから肘パッドまでのスタックを500〜510mmにできる700CホイールのTTバイクは極端に少ない。Slice RS 50サイズのジオメトリは「フレームスタック500mm、パッドスタック535mm」と要求を満たしていないように見えますが、これは付属するエアロバーのスタックが高いため。スタックの低いエアロバーを入れればフレームスタック付近まで下げることができる。このへんの「小柄な日本人にマトモなエアロポジションを提供するTTバイク」は本当に少ないので、日本の自転車メーカーにこそ頑張ってもらいたいところです。

Slice RSは薄っぺらい垂直シートポストや"尾びれ"に注目が集まりがちですが、真の目玉はステアリング軸のシャフトを排しているところ。これにより薄いヘッドチューブを実現し、ケーブルルートを確保し、さらにケーブルがハンドリングを邪魔しないようになっている。
Cannondale SLICE RS. Owner's manual Supplementより
フォーク側にベアリングを圧入し、上下から中空ボルトで止める。出荷状態ではフレーム側の平行がでておらず、そのまま組むと左にハンドルが切れていく症状がでていた。この問題は組み立てをお願いした小畑さんにイイカンジに修正してもらった。
小サイズだといろいろ台無しですが、ヘッドチューブの一番狭いところで25mmちょいくらい。
ブレーキはインテグレーテッドmini Vブレーキ。レバー比は高く街中でも峠の下りでもフツーな感じです。

写真の状態で総重量は8.2kg。2013年は5月の埼玉県自転車タイムトライアルロードレース大会(市民年代別クラス8位)、6月の内灘サイクルロードレース(ヤングの部20位)、7月のMt鳥海バイシクルクラシック1stステージ(年代別クラス9位)で使う予定。他にもパインヒルズGPXも走りたい。
  • Cannondale Slice RS (size 50)
  • Shimano Dura-Ace FD-9000, RD-7900
  • SRM Shimano DA-7800 compact (165mm, 50-34T)
  • Cannondale Aluminum PF30 BB Cup, FSA BB30 Bearing & NTN Bearing, Wheels Manufacturing PF30 Universal Adapter
  • USE Tula Aero bar with Aero Pods (38cm)
  • USE Alloy Ski Bend 20 degree
  • Zipp Vuka R2C Shifter
  • Planet-X Pro 82mm Wheel
  • Zipp Super-9 Disc
  • Veloflex Record Tubular 22mm
  • Dash cycles Stage.9 Saddle
  • SRM PowerControl 7
  • RaceWare Direct SRM TT Mount

このフレームを取扱う上でいくつか注意が必要なことがあります。第一にケーブル類の取扱い。Fブレーキは独立しているけれど、BB下に集合されているRD, FD, Rブレーキケーブルを配線・再配線する場合は、作業にあたって基本的に3本ともケーブルを緩める必要がある。3本のケーブルを通し終わりBB下カバーを取り付けた後にテンションを張ること。この手順を整理すると
  1. クランクを外す(ホイールも外した方が良い)
  2. BB下カバー(バッテリーホルダー)を外す
  3. RDのケーブルを通す(最難関)
  4. FDのケーブルを通す
  5. Rブレーキのケーブルを通す
  6. BB下カバーを取り付ける
  7. 全ケーブルにテンションをかけて固定する
  8. クランクを取り付ける
これが基本形。ここを横着すると美しくハマります。簡単な作業のはずが一日仕事になります。
第二に、BB下カバーを外したままケーブルのテンションをかけると、BBケーブルガイド破損の可能性が高くなる点(家でブレーキシュー交換・調整してる時に壊した)。後ろコンポーネントのワイヤーテンションを掛けるのは、BB下カバーを付けてから。
第三に、Rブレーキアームの固定ボルトが脆弱な点。この固定ボルトは中空で薄い。マニュアルの指示5.0Nmですら危ういレベル(家でアームスプリングの調整してる時に壊ry)。スペアを何本か確保しておきたい部品です。

あと最近の幅広なリムを使う場合、ブレーキシューホルダーを固定するTナットが長すぎて固定できない場合があり注意が必要。ここは小畑さんにBMCで使う短いTナットを入れてもらって解決。
他にも付属のPF30アルミカップ/BB30ベアリングを填めたらノンドライブサイドだけ回転しなくなるマイナーなトラブルがありました。これはフレーム・PF30カップ・BB30ベアリングのいずれかが不適切なはめあいであるか、もしくはベアリングの初期不良が疑われますが真相は不明(販売店を通じてキャノンデール・ジャパンに保証交換を求めたら拒否された。契約代理店以外の作業なのでまぁしょうがないかなー)。これはNTNのベアリングに交換したら改善したのでOK。


ヘッドの精度やBBのはめあいとか"初期ロット怖い"ではありましたが、快適に使っています。酷く手間がかかりますが、良いTTバイクです。