ローラー台の性能評価プロトコル案1

ローラー台の性能を数値化しようという試み。ローラー台の性能の中でももっとも重要だとおもわれる
  • 負荷装置の抵抗特性
  • フライホイールの慣性モーメント
を定量的に評価できないかなと、つぎのようなプロトコルでためしてみるテスツ
  1. 負荷装置の抵抗を計測するための"slow ramp"フェーズ
  2. ペダル停止〜速度0
  3. フライホイールの慣性モーメントを計測するための"fast ramp"フェーズ
  4. ペダル停止〜速度0で終了
参考までにテスト全行程の速度の推移はこんな感じ。
1番目の"slow ramp"フェーズでは低速から高速まで5〜8分ほどかけてゆっくり加速する。
3番目の"fast ramp"フェーズでは"slow ramp"より速く1〜2分ていどで加速する。
"fast ramp"フェーズで加速中にパワーメーターでは

総抵抗[N] = 負荷装置の抵抗[N] + フライホイールを加速するための抵抗[N]

が観測される。"slow ramp"フェーズで得た結果を負荷装置が発する抵抗[N]と仮定し、"fast ramp"フェーズの総抵抗から差し引くと、

加速抵抗[N] = 総抵抗[N] - 負荷装置の抵抗[N]

が得られる。ここで得た加速抵抗[N]を"fast ramp"フェーズにおける加速度[m/s^2]で除すると

F = ma
m = F / a

で、フライホイールの等価慣性質量[kg]が求められる。この一連のプロトコルのログを喰って
  • 負荷装置の負荷特性(CdA, Crr, Grade[%])
  • フライホイールの等価慣性質量[kg]
を求めるプログラムを書いてみた。ペダル停止してるのはこのプログラムでフェーズが切り替わるタイミング(power=0)を認識させるためで加速度は見てない。解析を自動化しようとしなければMicrosoft Excelだけでもできるはず。
ただし殆どのサイクルコンピュータは、短時間に発生する速度の変化を計測するのがスゴく苦手なので、速度のログにはノイズが多い。Garmin Edge 705で上記の処理を行ったところ、3〜5秒の移動平均で速度[m/s]とパワー[watt]をならしてやっと使える状態に。
それでもノイズが多くて、計測値が安定しないんですけどね。ダメじゃん。参考までにkurtのPro trainerの8.16[kg]フライホイールで計測した結果はこんな感じ。
まずは"slow ramp"フェーズ。横軸が速度[m/s]^2で縦軸が力[N]。
この分布からslopeとinterceptを求める。slope=0.254は速度によって増加する抵抗(CdA)を示し、intercept=8.764は速度に関係ない抵抗(Crr, 勾配)を示す。総重量75[kg]が転がり抵抗をCrr=0.004で走ってるのと仮定するとinterceptから勾配抵抗相当の値を分離できる

勾配[%] = 100 x  (8.764 - 0.004 x 75[kg] x 9.81[m/s^2]) / (75[kg] x 9.81[m/s^2])

となるので負荷特性は
  • CdA=0.254
  • Crr=0.004
  • 勾配=0.8%
に相当することがわかる。
次に"fast ramp"フェーズ。横軸が加速度[m/s^2]で縦軸が力[N]。縦軸は全抵抗から負荷装置の抵抗を差し引いた「加速抵抗」。
データの分布からslope=48.95なのでフライホイールがもつ慣性質量は
  • 等価慣性質量=48.95[kg]
と類推される。interceptは0かもしくはややマイナスになってれば正解。
同様のテストを2.72[kg]のフライホイールに変えて実施するとこんな感じ。
slope=0.242とintercept=7.554なので負荷装置は
  • CdA=0.242
  • Crr=0.004
  • 勾配=0.62[%]
slope=16.979なのでフライホイールは
  • 等価慣性質量=16.979[kg]
概ねローラーとフライホイール直径・重量から類推していた期待値に近いんですが、じつは追試すると再現性が余り高くない。20%以上ずれてたりする。"fast ramp"フェーズの回数をもっと増やしたほうがいいかもしれない。
"slow ramp"フェーズのデータは、マグネット式の負荷装置は速度に関係なく一定の抵抗[N]を示してほぼ水平になると思う。
速度とパワーを移動平均で丸めているけど、この丸め方でも結果が大きく変わる。プロトコル自体を含めて、もっとロバストに測れる方法が無いか要検討。ちなみに当初はコースティング時の加速度を測ろうとしたんだけど、速度計の精度というか追従性の問題で断念した。